ロッキング・オン
『グラスホッパー』について
『言い様によってはすごい陳腐だけれども、やっぱりそれでも何かいい言葉ってあると思うんですよ。「やるしかないじゃない、君の言うとおり」っていうその文章ができたときにすごく、小説が動きはじめたんですよ、あの小説は。三人称で書いた小説ってすごく久し振りだったんですけど、なかなか感情移入ができなくて悩んでいたところで開き直りができて』
我、この地を愛す。 仙台03 松島
『瑞巌寺の参道も好きです。太い杉の木が並ぶ場所で、じっと立ち止まっていると静かな気持ちになれます。最近出た、僕の殺し屋小説の、最後の対決の舞台が杉林なのは、ここを歩いている時に、「いいなあ」と感じたのが、明らかに影響しています。』
ひと癖もふた癖もある男の愛し方
伊坂作品に出てくる魅力的な男たちについて
「自分に酔っていたり、逆に、どうせオレなんて、ってクサってたり、やたらと威張る人っていうのがあまり好きじゃないんです。子供の頃によく『自慢話ほどつまらない話はない』って言われていたんですけど、それが頭に残ってるのかもしれない。みんな一回しか生きてないのに、人生に初参加なのに、決め付けて偉そうにすることに抵抗感があるんですね。人を見下したりバカにしたりする人って、現実社会でも割と多いけど、俺はこうなんだぜ、って言うことで、もっと大事なものをダメにしちゃってるようなことってある気がするんです。それはちょっと寂しいんじゃないかな、と」
Entertainment click! Book! 『グラスホッパー』
『誰も見たことのないお話を作る、って毎回思って書いているんですが、今回は何か不思議な感じがする話が書けたんじゃないかと。どこかの映画や小説で見かけたパターンに陥ってしまうのは、嫌なんです。』
いま仙台の作家が元気だ!
小説の舞台が仙台であることについて。
『物語も組み立てやすい。東京なら、都心にいた主人公を山奥に移動させるのはそれなりの手続きが必要だけど、仙台なら簡単です。』
men's non-no square books 『グラスホッパー』
引用に関して、『僕の言葉ではない、別の声が入るというのは小説ならではの表現だと思いますし、固有名詞を出すことで、読者が"おっ!"と思うのも楽しいですよね。でも最近は、その固有名詞がはたして共通の記号として作用しているのか気になります。だから今回は、思い切って架空の固有名詞を登場させました。こういうことも、小説なら"あり"だと思うんですよね(笑)』
ぼくの好きな本 by 伊坂幸太郎
本の探検隊 「グラスホッパー」
「この作品はストレートな応援ソングではないんです。人によってはひりひりしてしまうかもしれないんですが、それでいいと思うところもあるんです。だって、ビートルズの歌は格好いいけど、内容は優しいわけじゃないですし、この小説もそうなんだ、と本人としては思っています」
「気になるあの人」との60分 伊坂幸太郎
殺し屋の一人である蝉が、“俺はしょせん誰かのコピーではないか”と絶望を吐露するシーンが印象に残りました。そこには、伊坂さん自身の思いが強く投影されているように感じました。
「これは僕自身のことも含めていうのですが、ひょっとしたら自分は誰かの“パクリ”なんじゃないかという絶望感は、社会(この言葉はあまり好きではありませんが)に生きるわれわれには、誰にだってあるのではないでしょうか。だからといって、自分のオリジナリティーにいつまでもこだわりすぎていると、逆に進歩もしなくなる。十代の終わりごろから、僕はずっとそんなことを考え続けてきました。人間って、他人とのあいだのどうでもいい差異に、優劣をつけたがるところってあるじゃないですか。そのせいで蔑ろにされるものがあるくらいなら、誰かのコピーであることを決して恥じる必要はないと僕は思っています。」
文春図書館 今週の三冊 佐藤哲也 『熱帯』 書評
『佐藤哲也は、毎回、「他の何にも似ていない」オリジナルの物語を創り出し、それを独特のユーモアでくるんで、提供してくれる、そういう作家です。この作家と同じ時代に生きることができ、そしてその作品を母国語で読めるということを、僕たちはもっと誇ってもいいと思います。』
ミステリーレビュー『グラスホッパー』千街晶之氏の書評
サンデーらいぶらりぃ 一冊の本 『グラスホッパー』
「密集した場所にいるバッタは色が変わり、より遠くまで飛べるようになり、凶暴にもなる。「槿」のせりふです。人間ほど密集して生活している動物はあまりいない気がするんですよね。ならば、人を減らしていかなくてはならない殺人者の物語のタイトルがグラスホッパーであってもいい。人間はこんな世界で暮らしていくしかないけれども、ちょっと異常であるって認識した方がいいと・・・・・。
殺人の場面もこれまでより具体的に書きました。グロテスクなことを書きたかったのではなくて、描写しないのは怠慢かな、と思い、挑戦したつもりです。」
著者インタビュー 伊坂幸太郎 「グラスホッパー」
「殺し屋のナンバー1を決めるというものは、これまでの映画にもあるけれど、僕は今まで読んだことも見たこともないものが書きたかった。だから、殺しのシーンだけでなく、彼らの日常生活についても描きました」
伊坂さんのオススメの不穏な匂いのする3冊
著者インタビュー 『グラスホッパー』
『ノワールのような、人間の本質的で残酷な側面を提示しよう、というものではないつもりなんです。こんなに人が死んで、殺し屋がたくさんでてきているにもかかわらず、ある種爽快な雰囲気すら作れるんじゃないか、と思ったんですよね。爽快さって、理屈じゃないですし』
いま最も注目すべき作家の新作は、奇妙な殺し屋たちの物語。
映画や音楽などサブカルからの引用が物語で重要な役割を果たす点が、村上春樹さんと共通する部分もありますけど。
「よく比較されるんですが、ぼくはほんとに村上春樹さんを読んでないんです。でも『やれやれ』っていうフレーズが取り上げられるように、村上春樹さんって社会との距離をある種、超越したところから見つめているんじゃないかなって思うんですよ。ただ、ぼくはそういうスタンスが取れないんです。それに比べるとぼくは結構、真面目なことを書いてるんじゃないかって気がしてて。いわゆる根性みたいなものを、ぼくらはバカにして生きてきたんですよね。頑張ってやるよりは、ちょっと脇にいたほうがいい、と。たぶんそういうスタンスが、『やれやれ』という言葉に非常に近い気がするんですが、ただ、そうやって育ってきたぼくらは、いま意外と物事に一生懸命関わっていこうとしてるんじゃないかと思っているんです。さっきの『それでも生きていく』と一緒で。ただ、まともなことをいおうとすると恥ずかしいので、出力するときに歪みがかかる。それがユーモアだったり肩透かしだったりするんですけど。だからいっていることは普通のことで、そこに照れが入ってズレて、それが個性と取られているのではないかと最近自己分析してますけどね」
『グラスホッパー』インタビュー
Tokyo Walker 2004/8/17 掲載記事
登場するのは"ナイフ使いの名手"、飛び降りや首吊りを促す"自殺屋"、気配を消して車道やホームで人の背を押す"押し屋"。作者自身が、誰と誰が戦って誰が勝ち残るのか執筆中には決めていなかった、と語っているだけに、展開は実にスリリングだ。前作「チルドレン」とは、また異なる読後感をもつ読者も多いだろう。
「別に日和(ひよ)ったわけではないですけど『チルドレン』の時は僕、本が出る前はさほど不安じゃなかったんですよ。自分の子供だとしたら、彼はクラスの中でもうまくやっていけるだろうな、と思った。その点『グラスホッパー』はちょっと心配で、できることなら教室を覗きに行きたい気分です」
Book Salon Interview 『チルドレン』
『現実もそうだけれど、人はそれぞれにそれぞれの暮らしなり、大げさに言えば人生があるわけですよね。そういう一人ひとりの存在感みたいなものが僕はすごく好きなんです。それを伝えられるミステリーをこれからも書き続けていきたいですね。』
私が繰り返し聴く3枚のCD
①ザ・ルースターズ「THE ROOSTERS」『去年、ボーカルの大江慎也がライブをやったと知り、感動のあまり、『チルドレンⅡ』という短編を書いてしまいました。②斉藤和義アルバム全部③ソニー・ロリンズ「ソニー・ロリンズ Vol.2」
我、この地を愛す。 仙台02 自慢話
サッカー選手となった小学校の時の友人について
「大学卒業後、サッカー選手となった彼は、仙台での試合がある時には、「仙台に行くよ」と教えてくれ、僕は試合を観に行きます。そしてそのたび、感動します。彼のプレイが、冷静で、的確で、丁寧で、小学生の時に僕たちを翻弄させていた時と同様に、堂々としているからです。快活で明晰で、人に好かれていたあの頃の彼のままなのだな、と僕は誇らしく感じるのでした。」
著者からのメッセージ 「チルドレン」 伊坂幸太郎さん
言葉は矛盾に満ち、行動は”破天荒”な陣内について
「僕の中で陣内は存在感があるんですが、最初の物語で法に触れることもやっていますし、煩わしい奴だと思われるかもしれないと、少し不安でした。でも、皆さん、魅力的だと言ってくれるので、ほっとしています(笑)。モデルはいません。閉塞した現実に直面して大変だなと思うとき、こんな人がいたらラクになるだろうなと思って書きました」
8月のおすすめ本 『グラスホッパー』
キャラクターのプロフィール掲載
鈴木 high---170cm weight---63kg item---marriage ring
鯨 high---191cm weight---92kg item---black suits
蝉 high---173cm weight---65kg item---knives
AUTHOR'S TALK 『チルドレン』
『世代のせいにはしたくないけど、僕自身、深刻そうだったり偉そうに話されると耳をふさいじゃう。「大変だ、大変だ」というより、「いや、大変じゃないかもしれないんだけど」と穏やかにいう方が届きやすいんではないかという期待があるんです。』
ヒットの予感 『チルドレン』
『特定の誰かというのではなく、出てくる人がそれぞれ、自分の人生を生きている―という話が、読むのも書くのも好きなんです。そういう、"それぞれが生きている"というのを表すには、視点を変えると奥行きがでるんですね。前の話の脇役を、次では語り手にすることで、実は存在感を持った主役だということが分かるし』
「復讐を横取りされた。嘘?」元教師の鈴木は、妻を殺した男が車に轢かれる瞬間を目撃する。どうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業らしい。鈴木は正体を探るため、彼の後を追う。一方、自殺専門の殺し屋・鯨、ナイフ使いの若者・蝉も「押し屋」を追い始める。それぞれの思惑のもとに―「鈴木」「鯨」「蝉」、三人の思いが交錯するとき、物語は唸りをあげて動き出す。疾走感溢れる筆致で綴られた、分類不能の「殺し屋」小説。
日本推理作家協会賞短編部門『死神の精度』受賞の言葉
『短編ミステリーの書き方は、長編以上に分からず、いつも試行錯誤しながら書いていますので、その短編で評価していただけたというのは、本当に励みになります。急に特別なことができるわけでもないのですが、それでも、もう少し小説を書いてみよう、とそういう気持ちになれました。』
次代を担う新実力派作家対談 伊坂幸太郎×熊谷達也
『伊坂さんの作品の根底には「世の中には許せる悪と許せない悪がある」という思いが強くあるよね。万引きしたり放火したりしている連中が愛すべきキャラクターとして出てきて、そんな彼らが本当の悪は許すなとメッセージを発している。僕もこれには共感するんです。世の中には法律とは別に、みんなが皮膚感覚として持っている善悪の観念がある。それが伊坂さんの作品にはさりげなく
盛り込まれている。』
BOOK セレクト 『チルドレン』
『僕らはドーベルマン的なテーマを、ドーベルマンの姿のままで熱く語られると耳をふさいでしまう。だから、柴犬を装って迫っていく。これは作家としての戦略ではなく、感覚として僕らが生きてきた時代に合うものなんです。』
吉川英治文学新人賞『アヒルと鴨のコインロッカー』受賞の言葉
『様々な人の力を借りて、本を送り出すことができました。いつかお礼をしないといけないなあ、と思っていたのですが、今回、意図せず、こういう大きな賞をいただけたことで、「これがお礼のかわり、ということでいいのかな」と考えている今日この頃です。』
No Book No Life 作家 伊坂幸太郎
“作家になろう”と思った19才のときについて
「大学1年のとき、自分だけの“特別あつらえの人生”があるんじゃないかなと勝手に思っていました。その実現には作家しかないと。そのチャンスをただ待っていても仕方がないと思い、小説をこっそり書き始めました。それでも書くと発表したくなり、雑誌に応募していました。そのころは、箸にも棒にも引っかかりませんでしたが(笑)」
文春図書館 著者は語る 『チルドレン』
『最後の「イン」は今のぼくの気持ちにいちばん沿っていて、こうやって淡々と毎日が続いていくんだ、という雰囲気が残る小説を目指しました。皆がそう思えたらハッピーだし、世界の平和にも通ずるって。』
こういう奇跡もあるんじゃないか?
まっとうさの「力」は、まだ有効かもしれない。信じること、優しいこと、怒ること。それが報いられた瞬間の輝き。ばかばかしくて恰好よい、ファニーな「五つの奇跡」の物語。
吉川英治文学新人賞受賞の言葉
『小説を書いているときはいつも、暗い道を進む気分です。明かりのない場所を手探りで進み、方角は合っているのかな、と不安になって、立ち止まったり、引き返したり、その繰り返しです。そんな時に、この賞をいただけました。』
NOW PRINTING 注目作先取りインタビュー 『チルドレン』
『僕は、もともとは全然、論理的な人間じゃないんですよね。本来は青春小説的なもの、若者たちがワイワイガヤガヤやってる空気感のあるもの好きなので、ただ自然に書くだけだと、たぶん、それだけのものになっちゃうんです。でも、その一方で「ミステリーにしなきゃいけないんだ」という意識も根強くあって。だからいつも、ミステリーの部分は、ほんとにすごく考えます。一生懸命、「どうしたらみんな驚くかなあ」と。』
ミステリー、好きですか? 伊坂幸太郎特集
6pのインタビュー
『僕の小説を評して、「柴犬の皮をかぶったドーベルマン」といってくれた人がいて、その言い方はとても気に入っているんです。その、「ドーベルマン度」を強くしたい気もしますよね。柴犬の皮を脱ぐ気もないんですが、柴犬の皮を取ったらチワワだった、というのはちょっと寂しいですね。』
我、この地を愛す。 仙台01 正宗が二人
青葉城と仙台駅の伊達正宗像について。
『青葉城の正宗は、仙台市街地を見下ろす恰好になっているのですが、ちょうど駅の方角を向いている気もします。「おまえ真似するんじゃねえよ」と駅の正宗像を睨みつけているのかも、と思ってしまいました。』
この人のスケジュール表
『読んでいて楽しい文章にしようとは考えています。でも、こじゃれたものを書こうとしているわけではなく、リズム的に気持ちいいふうに書いてます。ユーモアのあるものが好きなんですが、会話にはそれが出やすいのかもしれません。電撃的に五行先まで浮かんでくるんです』
TEA TIME マニュアル通り
悪徳業者の電話セールスについてのエッセイ。
『もう少し、丁寧な対応はできないのでしょうか。あれだけ、不快な喋り方をされたら、穏やかな僕だって、腹が立ちます。騙される人も騙されません。ぜひ、マニュアルの改善を!いや、そういう問題じゃないか。』
ひと 本 『アヒルと鴨のコインロッカー』
『どうしてそんなおかしな設定を思いつくんだとか、よくいわれるんです。だけど、
僕にとっては別におかしな話じゃないんですよ。それどころか、リアリティーを求めているんです』
'03年もっともミステリー界を沸かせた男、その小説作法とは?
『僕は大江さんの小説を音読したことがあるんですけれど、楽器を演奏するみたいに文章がぐねぐねしているんですね。
小説って、きっとその文章を読んでいるだけで幸せというところがあるものだと思います。
そうでなければ映像にしてしまえばいいんであって。読者としてそうなので、自分の小説もそのようになればいいなあと。』
INTERVIEW 伊坂幸太郎 「アヒルと鴨のコインロッカー」
「僕はリスクのない犯罪に嫌悪を感じる。だからこそ、そこに興味がある。『重力ピエロ』の連続レイプ犯もそうですが今回のペット殺しも、リスクのない犯罪=悪という形をとりました」
本バカにつける薬 注目作家に聞く!
『あまりハッピーな話にならないことが多いですね。いくら悲しいことやつらいことがあっても、自分で決断した人生を人は生きていくしかないんだ、ということをずっと書き続けていきたいんです。』
前書・後書 また、っていつだよ
③ご自身にとって「小説を書く」こととは?
『ゼロから物語を作り出す喜びでしょうか。デビューするきっかけとなった新人賞をいただいた時に、奥泉光さんが「小説は何でもできるんだよ!」と目を輝かせていたのを最近よく思い出します。おかげで「何でもできるのかも......」と思い始めちゃってます。』