2004/09/11

THE21 2004/10

「気になるあの人」との60分 伊坂幸太郎




殺し屋の一人である蝉が、“俺はしょせん誰かのコピーではないか”と絶望を吐露するシーンが印象に残りました。そこには、伊坂さん自身の思いが強く投影されているように感じました。


「これは僕自身のことも含めていうのですが、ひょっとしたら自分は誰かの“パクリ”なんじゃないかという絶望感は、社会(この言葉はあまり好きではありませんが)に生きるわれわれには、誰にだってあるのではないでしょうか。だからといって、自分のオリジナリティーにいつまでもこだわりすぎていると、逆に進歩もしなくなる。十代の終わりごろから、僕はずっとそんなことを考え続けてきました。人間って、他人とのあいだのどうでもいい差異に、優劣をつけたがるところってあるじゃないですか。そのせいで蔑ろにされるものがあるくらいなら、誰かのコピーであることを決して恥じる必要はないと僕は思っています。」