問題作!?『モダンタイムス』に問う、気鋭作家の挑戦とは。
「僕は自分の好きなものを書くっていうのを守る一方で、独りよがりにもなりたくないと思うから、やっぱり読む人をがっかりさせたくないんですよ。だけど、全部合わせるつもりは当然ないから、そのバランスが難しいんですよね。それはいつも手探りで不安なんです。でもね、しばらくはそういう、ちょっと僕寄りになるというか、読者はある程度がっかりするかもしれないなあっていう作品が続きそうな気がしてるんです(笑)。読者は減っていくんだろうな、と少し思ってます」
「モダンタイムス」刊行記念 ロング・インタビュー
僕は最初の頃の作品は、割とテクニカルに見える、「きっちりパズルのように閉じる」小説を書いてきたので、そういう部分が好きで読んでくれている人も多いだろうとは想像しているんです。ただ、自分自身は割りと大雑把で、綺麗に畳まれることにそれほど関心がないんですよね。パズルみたいなのって嫌いなんですよ(笑)。なので、最近はもう、「物語を畳まなくて、満足感を与えることのできるものを書きたい」と思って、その思いで、『ゴールデンスランバー』と『モダンタイムス』は書いたんですよね。それと、初期の小説では、現実社会で悪がはっきりしないからこそ、「フィクションの中でくらいは、悪をはっきりさせて勧善懲悪でいいじゃないか」と考えていました。でも、やはり『ゴールデンスランバー』の前に十三作の小説を書いているうちに次第に変化してきたんですよね。現実そのものを書きたいわけではないんだけど、実際の悪は複雑でわかんないよね、みたいなことをフィクションの中に書いて、しかも納得してもらいたいという気持ちがあるのかもしれません。