2008/03/06

週刊文春 2008/3/13

映画「Sweet Rain 死神の精度」公開記念対談 金城武 VS 伊坂幸太郎





伊坂 「僕が描いた死神はクールですよね。人間に同情しない。でもそれでいいかなあ、と思ったんですよね。死ぬことは負けではないんじゃないかな、と思って。」



金城 「だから伊坂さんの死神の判定はほとんど全部、死ぬことが「可」なんですね。」



伊坂 「そうそう、それはそうしないと。助けることがハッピーになるというのが根底にあってはいけないので。現実に死んでしまう人はたくさんいるのに、死んだことはダメなことで、負けになっちゃうんだよ、というのは、やっぱりつらいじゃないですか。僕は全部判定が「可」で、死ぬとしても、でもその人のそれまでの生活は良かったかもしれない、というのをやりたかったんです。僕は自分の本のなかで「人間は死を棚上げにしている」という言葉を使っているんですが―。」



金城 「死を棚上げに―?」



伊坂 「人はいつか確実に死ぬのは決まっているけれど、じたばたしてないじゃないですか。明日死ぬかもしれないのに、それはどっかで忘れようとしている。というより、忘れているんですね。もし、僕が死ぬということを完全に理解していたら、僕は仕事をしないで、奥さんと子供とずっと一緒に暮らしているような気もするんですよ。でもそうしてないのは、どっかで明日は死なないだろうと高をくくっているんだと思うんです。どうにか折り合いをつけて生きているんだろうな、と。」



金城 「僕は、明日死ぬかもしれないという気持ちで生きていなさい、と言われたことがあります。いつ死んでも大丈夫なように生きる姿勢が大切だと。」