キッカケの素 オススメの1冊
「明るい話でもなければ、泣ける話でもありません。問題作というわけでも、かといって重々しい大作でもありません。
ただ久しぶりに、小説を読んでいて、震えてしまいました。どの短編にも、現実の事件を題材にしている部分が見受けられます。もちろんさほど、大きな事件ではありません。地味で、救われない、ごく普通の人間の半生を描いているのですが、それだけに静かな迫力が滲んでいます。この本の向こう側で、作者は息を潜め、読者を睨みつけ、『人には、こういうこともある』と突きつけてきます。鋭い眼光と、優しくも淡々とした呼吸、それを感じる小説でした」