2009/01/06

文蔵 2009/1

伊坂幸太郎ワールドを愉しむ




文蔵 2009/1




『モダンタイムス』に限らず、最近の作品では"国家"について語られるシーンが多いように感じます。



『魔王』はまた意図がちょっと異なるのですが、『ゴールデンスランバー』は娯楽小説であることを重視しましたから、どうせ追いかけられるなら見えない敵に追われたほうが怖いだろう、それなら国家だな、とわりと軽い発想だったんです。本が出たあと、インタビューなどで「監視社会に興味があるんですか?」と聞かれて困ってしまったんですけど、むしろそうしたことをちゃんとモチーフにしたのは、『モダンタイムス』が初めてですね。



何者かに"挑む"構図は、伊坂作品に共通するものですね。その対象が国家であった、と。



何かに挑む物語が、僕も読者として好きでしたし、読み手にとって一番ワクワクすることなのかな、と。僕自身は臆病なのでそうした実体験はできませんから、せめてフィクションの中くらい味わいたい、とも思いますし。『モダンタイムス』では、巨大でどうにもならない敵と相対した時の無力感を表現したい、というのがテーマにありました。そしてそれをエンタテインメントに落とし込む・・・・・それが、僕と担当編集者が考える、この作品の大きなチャレンジだったんです。勝てないどころか、戦いにすら持ち込めないようなものを描いたらどうなるか、と。