2008/05/31

SIGHT 2008 SUMMER vol.36

SIGHT 作家インタヴュー 伊坂幸太郎




SIGHT 2008 SUMMER vol.36


僕が書くものは・・・・・最近は特に、幸福感があるほうがいいなあって思うんですよ。「世の中ってこんなにひどいんだよ」とか、「人ってこんなに愚かなんだよ」っていうのって、「それは言われなくてもみんなわかってるよ、生きてれば」っていう感じがしちゃってるんですよ。だから、どうせ作り話なんだから、幸福感があって、あざとくない。なんか笑える感じで。『ゴールデンスランバー』もそうなんですけど、ぎりぎり幸福感を作ろう、ひどい話だけど。っていうのは、この1、2年、すごく強く思うんですよね。どうせ作るなら、幸福感の錯覚を作りたいっていう。論理的に考えると全然ハッピーじゃないんだけど・・・・・これはまさに音楽とか映画への憧れなんですけど、どんなにつらい歌詞を歌ってても、音楽がかっこよければ、なんかいい幸福感に満ちているじゃないですか。映画も、すごい悲惨でも、かっこいい音楽で終わっていけば「ああ、ハッピーエンドだったかな?」って錯覚するんですよ。それが一番届くかなっていう気がするんですよ。