2008/03/10

本とも 2008/4 No.9

特集 伊坂幸太郎 「あるキング」を語る



『あるキング』はどういう発想から生まれたのか



「まずひとつは、スティーヴン・ミルハウザーやジョン・アーヴィングといった作家がよく書いている、異常な人の人生をたどる小説が、ぼく、すごく好きなんですよ。たとえば、機械仕掛けのオモチャをつくる異常な天才の一生とか・・・・・・。
あと「こういうタイプの作品って、いま本屋さんにないから読みたいな」というところからつくることが結構あるんです。『ゴールデンスランバー』のときも、ああいう冒険小説みたいなのが最近あまりないなと思って。それと同じような発想で・・・・・・。日本の作家でこういう、人の半生を書く小説って最近あまりない。しかも異常な人、変なインテリみたいな人物を書きたいというのは、ずうっと思ってたんですよ。海外だとそういうテーマでわりと思いつくんですけど、日本ならではの分野ってないかなっていろいろ考えていくと、野球って意外に日本っぽい文化じゃないかと。大リーグと日本の野球の違いがあって、甲子園もあるし。なので、野球選手の半生というのを書こうと。タイトルに「ある」って付くのは、ダルデンヌ兄弟監督の「ある子供」という映画があるんです。それを真似て「あるキング」。キング、王様。すごくいいなというのがまずタイトルとしてあったんです。結局、ホームランキングになる男の話なんですけど、それは特に野球小説を書きたいんじゃなくて、伝記を書きたくて野球を使うみたいな感じなんです。」