2008/02/17

小説すばる 2008/3

クロスメディア総力特集 伊坂幸太郎 ロングインタビュー



小説すばる 2008/3


映画、漫画、小説、そのメディアならではの表現方法と感じる部分について




「グエムル」


【映画篇】


『グエムル』について



「ウォークマンを聴いている女の子がいて、そこだけ静かな音楽が流れているんですけど、後ろから怪物がガーンて来るとか、あれはもう、ほかの媒体だとうまく表現できない。ソン・ガンホが娘を連れて逃げようとしたら別人だったというシーンとか、小説でも、まあ、娘ではなかった、って書けるんですが、あんまり興奮はしないですよね。説明はできるけど。」



「スラムダンク」31巻


【漫画篇】



『スラムダンク』は、僕がいろいろ言うことでもないんですけど、試合中、会話が一切消える有名なシーンがあります。漫画だからできる、というと、やっぱりあれを思い出したんですよね。あのシーンは当然、映像で音なしでやってもいいし、できると思うんですけど、この人はこの瞬間にこういう顔をしていたんだ、こういうプレーをしていたんだというのは、絵が止まっているから、より何かこっち側に伝わってくるような気がします。」



「ぬかるんでから」


【小説篇】



佐藤哲也さんの『ぬかるんでから』は、僕が解説を書いたので、説明しやすいです(笑)。これは解説に書いたままなんですけど、例えば、「約束した」じゃなくて「確約した」という言葉を選ぶだけで何かおかしい感じがしますよね。「妻に約束して」というよりも、「妻に確約して」というほうが何か不思議なニュアンスが出てくる。言葉を選ぶということで、何かユーモアや不思議な感じが出たりするというのは、やっぱり小説ならではだなと僕は思うんですよね。